著者のコラム一覧
嶺里俊介作家

1964年、東京都生まれ。学習院大学法学部卒。2015年「星宿る虫」で第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー。著書に「走馬灯症候群」「地棲魚」「地霊都市 東京第24特別区」「昭和怪談」ほか多数。

紡がれていく恐怖 ~『異形コレクション』~

公開日: 更新日:

人類に恩恵をもたらす「肉霊芝」の秘密とは

 久永実木彦著『風に吹かれて』。

 この作品で描かれる生ける死者の世界は、死者が浮かぶというもの。冒頭の引用文から、スティーブン・キングの『IT』の一場面から着想を得たと窺えます。

 人間は死ぬと数日で腐敗が止まり、体内に発生したガスにより<ゾンビ風船>となる。死者は左足の鉄輪に、墓石からロープで繋がれる。遺族が用意した服を身につけて、舞踏会のように宙で揺れている。そんな霊園の墓守が主人公。

 風が吹き渡る緑の丘で、小綺麗な衣装で優雅に踊る死者たちは幻想的かつコミカルです。夢に出てきそうだ。

 斜線堂有紀著『肉霊芝』。

 衛星写真の画像でしか全容を確認できない広大な杜。『風の谷のナウシカ』の腐海をイメージすると分かりやすいかな。ただし杜は植物や菌類ではなく、肉。巨大な肉です。

 肉霊芝は死と再生を繰り返しながら人類に恩恵をもたらしていく。新型ウイルスが蔓延すると、感染して免疫を人類へ提供する。また肉霊芝から生み出された臓器は拒絶反応を絶対に起こさない。まさしく完璧な移植用臓器です。

 とうぜん管理下に置かれ、研究と分析が進められていく。研究員の主人公が目の当たりにした、肉霊芝の出生の秘密と存在意義、そして最終目的とは──。

 物書きとして、良い意味で「やられた」と衝撃を感じることがよくあります。そんな作品に出遭うことも楽しみですが、同業者にとっては怖さでもあるのです。

 さて、2カ月に亘る連載でしたが今回が最終回となります。講談社Treeさんと並行して全9回、重なる週一回の連載は初めてだったので良い経験になりました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

 みなさんに再びお会いできる機会を楽しみにしています。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    戸郷が離脱、則本メッタ打ちで巨人が緊急補強へ…候補に挙がる「オリックス投手」の名前

  2. 2

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  3. 3

    佐藤二朗騒動の余波!「福田組」の長澤まさみへの“ハラスメント”舞台挨拶の悪ノリ動画が再注目…女性視聴者は嫌悪

  4. 4

    孤立深まる高市首相…国会10日ぶり正常化でも続く“包囲網” 与党内からも反発の声噴出の自業自得

  5. 5

    ベネズエラの剛腕マチャドが今オフ、オリックスとの契約満了で日米争奪戦に発展か

  1. 6

    小池栄子が一番の被害者? 佐藤二朗“ハラスメント騒動”に足引っ張られた「さよならノワール」の評価は上々

  2. 7

    高市首相が衆院集中審議に“出たくない”とブー垂れ…身内の自民国対「もう疲れ果てた…」ヘトヘトのお気の毒

  3. 8

    山田涼介が「令和最強アイドル」と評されるワケ…主演ドラマ「一次元の挿し木」は玉森裕太を三歩リード

  4. 9

    白井球審への“侮辱行為”で退場した一部始終「何やおまえ、いい加減にしろよ!おまえも未熟なんだから…」

  5. 10

    沈黙貫く橋本愛vs佐藤二朗「週刊新潮」で反論の泥沼化…SNS連投で"自滅"を心配する声も