虎ファン代表のダンカンさん 人生をタイガースとともにする契機になった60年前の阪神戦
「松井さんにロッカールームまで案内され、ユニホームにサインしてくれた」
こういう貴重なお宝は実はたくさんある。例えば、松井秀喜のニューヨーク・ヤンキースのユニホーム。アメリカに行った時にパンチョ伊東さんがつないでくれた、松井さんにロッカールームまで案内され、ユニホームにサインしてくれた。僕にとっては宝物です。それもこれもすべて阪神がつないでくれた縁です。
次の日本一は一昨年の2023年です。38年ぶりです。長男の甲子園、次男の虎太郎と3人で自宅の風呂場でビールかけをやったのかな。でも、85年があまりに強烈過ぎて、あの時みたいには盛り上がらなかったですね。
今年は阪神にもうマジックが出ました。強過ぎてハラハラドキドキ感がないですね。阪神ファンの場合、普通の人生の他に、1年のうちの7カ月は143個(試合)の小さな人生があるわけです。今日は93試合目(7月29日)で、残りもう50試合しか見ることができない。今年は優勝のうれしさより、試合数が減っていく寂しさが強いですね。胸の中は熱いのに、もう秋風が吹き始めたっていう感じかな。
■談志師匠に一度だけ褒められた思い出
阪神との出合いとともに僕にとって大きかったのは師匠の立川談志との出会いです。このことは4年前に日刊ゲンダイの連載「ダンカンの笑撃回顧録」でも書きました。
僕はダメな弟子だったけど、一度だけ褒められたことがあります。ある時、自宅に草が生えているので、師匠が「キレイにしとけ」と言って高座に出かけて行った。それを僕は植木まで全部抜いちゃってね。帰って来た師匠に「バカ野郎、何やってんだ」と怒られて。そこで「ちょっと待ってください」と言って、何をやったかというと、近所の植木屋で20本くらいかき集めたんです。師匠の家の近くには植木屋さんが多かったですからね。
師匠に公衆電話から報告したら、車を出して運んでくれて、立派な庭ができた。師匠は「でかした!」と大喜びでしたね。バカほどかわいいということなんでしょうかね(笑)。
談志師匠の最後の弟子は立川談吉です。実は来年3月、真打ちに昇進するのですが、この前「相談がある」と訪ねてきましてね。「2代目立川談寛」を名乗らせてほしいと。俺みたいにくだらない人間の名前を襲名したいって言うんですよ。「それはよくないんじゃないのかな」とは言ったけど……。ただ、よく考えてみたら俺の名前が残るのかと……。いろいろやっておくもんだなと思いましたね。談志師匠が聞いたら「おまえふざけるな、ダンカン、バカヤロー」と言われそうだけど(笑)。
映画「抗う者たち」が公開中です。僕にとっては10本目くらいの主演作になります。北野武監督の2作目「3-4X10月」で柳憂怜と共演したのですが、それ以来35年ぶりの共演です。あの映画は沖縄に拳銃を買いに行く話でしたが、今回は運命の不思議について描いています。北野監督のファンの方にも楽しんでいただけると思います。 (聞き手=峯田淳)