著者のコラム一覧
奥真也医師、医学博士、経営学修士。医療未来学者

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

米国における乳がん治療の実際<3>医師は意見を述べるだけ

公開日: 更新日:

 米国在住の50代の日本人女性Aさんが乳がんを宣告され、治療に奔走する話の3回目です。精密検査で石灰化が確認され、ごく初期の乳がんと診断されたAさんは、都合3回の手術を受けることになりました。最初の2回は部分切除にチャレンジしましたが、いずれも取り残しがあり、最終的に全摘手術に。Aさんはその間、すべてを自ら主体的に進めなければ何ひとつ治療が進まない米国式医療に翻弄されっぱなしです。精密検査の造影MRIの手続き、その結果の確認、手術の予約も自分で行わなければ誰もやってくれません。2回の部分切除手術では、手術時間を含めて病院には3時間ほどしかいられませんでした。全摘手術をした3回目は1日のみの入院で手術後、執刀医との話もなし。廃液チューブを体にぶら下げたまま退院し、廃液量を毎日記録、それを持参して通院。チューブが抜けると事前に手続きしていた乳房再建手術が始まりました。Aさんはこうした段取りと手続きをほぼひとりで粘り強く進めたのです。

 さて、3回目の手術の組織結果が良好だったので、Aさんはやっと手術から解放されました。これからは半年に一度、腫瘍専門医(オンコロジスト)の女性医師に会って、長く経過観察することになります。ありがたいことに、21世紀では乳がんですぐに亡くなるということはまずありません。これからは腫瘍専門医が主治医になり、タモキシフェンというホルモンを用いた抗がん剤の処方や、定期検査のプランもその先生が提案します。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず