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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

複数の研究をまとめる「メタ分析」で情報の怪しさを明らかに

公開日: 更新日:

 1つの研究では偶然にいい結果が出るという可能性があります。大して効かない薬でも、まぐれでプラセボに勝ってしまうことがあるというと、わかりやすいでしょうか。

 前回紹介した抗インフルエンザ薬の研究も、プラセボを使ったランダム化比較試験とはいえ、まぐれで勝った可能性は残されています。

 そこでまぐれで勝ったのではないことを証明するために、何が行われるかというと、同じ研究をして同じ結果が出るかどうか「追試」をするわけです。繰り返し同じ研究をして同じ結果が出るのであれば、まぐれで勝った可能性は極めて小さくなります。さらに同じ研究を繰り返すだけでなく、そうした似たような複数の研究をひとまとめにするというのも1つの研究として成り立ちます。

 この同じような研究をまとめて分析する方法をメタ分析、メタアナリシスと呼びます。今回はそのメタ分析の結果を見てみましょう。2015年に発表されたこのメタ分析では、9つのプラセボを使ったランダム化比較試験を統合してオセルタミビル(タミフル)の効果を検討していますが、オセルタミビルを使うことによって、1日程度早く治ることが示されています。前回紹介した研究とほぼ同様な結果が、似たような研究9つを合わせても得られることが示されたわけです。

 ここまできてようやくインフルエンザに対するオセルタミビルの効果が明らかにされました。薬の効果が科学的に確かめられるまでには、この連載で示したような長い道のりがあります。誰かの単なる経験や感想として流される情報がいかに怪しいものであるか、わかっていただけたでしょうか。

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