著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

演歌歌手・三沢あけみさんは2つのがんを克服 検診と「一がん息災」

公開日: 更新日:

 一方、肺がんは3年前の人間ドックがキッカケだったそうです。報道から推測すると、X線やCTなどの画像検査で異常を指摘され、異常が認められる部位から組織を採取して確定したとみられます。

 三沢さんが患った肺腺がんというタイプは、たばことの関係が薄く、肺の奥にある肺胞の周りにできるため、X線で発見しやすいのが特徴。今や男性の4割、女性の7割がこのタイプですから、侮れません。

 三沢さんは胸腔鏡手術で切除したそうです。胸に3つか4つの小さな穴を開けて手術器具やカメラなどを挿入して腫瘍を摘出する方法で、メスで胸を開くよりも肉体のダメージが少なく回復が早い。三沢さんは「次の日は歩ける状況ぐらいに」なったといいます。

 この回復ぶりからすると、肺は全摘ではなく、肺葉切除か部分切除でしょう。これなら、呼吸機能は切除前の80%程度とされ、歌手活動も可能です。同じ肺腺がんを切除したLUNA SEAのボーカル河村隆一さん(51)も、歌手活動を再開していますから。

 一度がんになったら、二度とゴメンだ。そう思う気持ちは分からなくもありませんが、一度がんになった方はその後の経過観察をしっかりと行って、経過観察期間を終えても毎年のがん検診や人間ドックなどをきちんと受けることが珍しくありません。それで、転移や新たながんが早期に発見されやすいのです。それが、一がん息災。

 三沢さんも強調されているように検診をきちんと受けることが、一がん息災の第一歩です。皆さんもこれを心掛けてください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋