睡眠をなるべく妨げないお酒の飲み方とは? 睡眠外来の作業療法士に聞いた

公開日: 更新日:

 なかなか眠れないから、寝る前にお酒を飲んでいる──。そんな人は少なくないだろう。アルコールが睡眠の質を低下させることは知られている。できるなら、飲まないほうが熟睡できる。しかし、それでもやっぱりお酒を飲みたい、あるいは飲まなければならない場合、どうすれば睡眠への悪影響を軽減できるのか。クリニックの睡眠外来で睡眠の質を改善する指導を行っている作業療法士の菅原洋平氏に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 適量の飲酒は寝つきを良くするのはたしかといえる。アルコールは脳内で興奮性の神経伝達物質の働きを抑え、抑制性の神経伝達物質GABA(ギャバ)のGABAA受容体を活性化して、鎮静や催眠を招くと考えられている。しかし、体内でのアルコールの代謝と排泄は迅速に行われるため、入眠作用は数時間で消失する。

 さらに、その後はアルコールの代謝物質であるアセトアルデヒドの覚醒作用によって中途覚醒が増え、睡眠が浅くなる。「アルコールは『覚醒』と『睡眠』に対して交互に作用する物質なのです。お酒を飲み始めると脳が覚醒して気分が高揚し、冗舌になり、しばらくすると眠くなってくる。寝ついたと思ったら途中で目覚めてしまい、その後は妙に気持ちが高ぶって眠れない……そんなパターンが多いのはそのためです。こうしたアルコールの作用が睡眠の質を低下させるのです」

 また、アルコールには体内の水分の排出を促す利尿作用があり、夜間多尿を招いてこれも中途覚醒につながる。さらに、そうした作用によって「脱水」が生じ、お酒を飲めば飲むほど汗や尿によって体の中の水分が失われていく。

 この脱水状態も睡眠の質を低下させる大きな要因になるという。

「われわれは睡眠中に500~600ミリリットルの水分を失っています。そのうえ、アルコールの代謝にはたくさんの水分を必要とするので、お酒を飲んでから寝ると、就寝中の脱水を起こしやすくなるのです。体内の水分が減ると、血流が悪化して細胞へ供給される酸素などが少なくなり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて睡眠に悪影響が出ます。また、体内の水分が減った分、覚醒作用があるアセトアルデヒドの血中濃度が上がります。酔ったまま眠りについて脱水状態で目覚めると、頭痛や吐き気といった二日酔いの症状が出るのはそのためです」

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち