著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【エキノコックス症】幼虫を完全に死滅させる駆虫薬はなく予防が重要

公開日: 更新日:

「エキノコックス症」はエキノコックス属条虫の幼虫(包虫)に起因する疾患です。日本では北海道のキタキツネが主な感染源で、糞中にエキノコックスの虫卵が排出され、ヒトにはその虫卵が手指、食物、水などを介して口から入ることで感染します。また、北海道で放し飼いをして感染したイヌもキタキツネ同様に感染源となります。北海道以外でも、ここ数年、愛知県の知多半島でイヌのエキノコックス症が多数報告されています。

 ヒトが幼虫の寄生を受けた場合、感染初期(約10年以内)は、無症状で経過することが多いのですが、その後、幼虫は肝臓など主要臓器の組織内でがんのように無秩序・無制限に増殖し、重篤なエキノコックス症をもたらします。肝臓などで幼虫が発育すると、肝腫大、腹痛、黄疸、肝機能障害などが現れます。さらに進行すると胆道や脈管などの他臓器に浸潤し、閉塞性黄疸、病巣の中心壊死、病巣感染を来して末期には腹水や下肢の浮腫が出現し、やがて死に至ります。肺、腎臓、脳などでも包虫は発育することが可能で、脳転移すると意識障害やけいれん発作などを起こすケースもあります。

 エキノコックスの成虫に対しては、駆虫薬の「プラジクアンテル」がほぼ100%効果があり、キツネやイヌに広く用いられています。しかし、人体エキノコックス症の原因となる幼虫に対しては、完全に死滅させる駆虫薬はなく、外科的切除が唯一の根治的治療法となります。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    渋野日向子に「ジャンボ尾崎に弟子入り」のススメ…国内3試合目は50人中ブービー終戦

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  5. 5

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  1. 6

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  2. 7

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  3. 8

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  4. 9

    後藤真希と一緒の“8万円沖縄ツアー”に《安売りしすぎ》と心配の声…"透け写真集"バカ売れ中なのに

  5. 10

    沢口靖子も菅田将暉も大コケ不可避?フジテレビ秋ドラマ総崩れで局内戦々恐々…シニア狙いが外れた根深い事情