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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「ステロイド」を使っている患者の手術は細心の注意が必要

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術後に投与して補充するケースもある

 こうしたリスクを避けるため、ステロイドを使っている患者さんの手術を実施する際は、術前に服薬や投与を中断するなど、ステロイドを減らす対処をします。病状によって完全に中止することができない場合は、服用を止めたうえで必要な量を注射で投与しながら減らしていく方向に持っていきます。

 ステロイドを中断する期間は、病気の種類や患者さんの状態によって変わってきますが、おおむね4~5日、長くて2週間くらいです。このようにして、感染症のリスクを減らしてなるべく安全に手術ができる環境を整えるのです。

 一方で、長期にわたってステロイドを投与していたり、多量に使っている患者さんが大きな手術を行う場合、術中や術後にステロイドを補充する「ステロイドカバー」と呼ばれる処置を実施するケースがあります。

 前述のように、ステロイドを長期投与していると副腎が萎縮して、ステロイドホルモンの分泌が低下している可能性があります。そうした患者さんは、手術によって大きな身体的ストレスを受けたときに急性副腎不全を起こし、血圧や血糖をうまくコントロールできなくなって低血圧や低血糖が生じたり、抗炎症作用が低下して発熱するなど、危険な状態に陥るケースがあります。そうしたリスクを予防するため、不足している分のステロイドを投与して補充するのです。手術のストレスがかかっている術後数日~1週間程度が経過したら、速やかにステロイドを減らしていきます。

 ステロイドカバーについては、まだしっかりしたエビデンスが確立されていませんが、膠原病内科医などステロイドの適切な使い方を熟知している専門医と相談のうえ、実施されるケースは少なくありません。

 このように、手術という全身への負担とステロイドの適正使用には、患者さんを守る医療安全の一環として細心の注意が払われているのです。

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