(1)私の脳がおかしいのかな…電話がかかってきた

公開日: 更新日:

 年が明けてしばらく経った頃、「最近、S姉さん(母のこと)がゴルフにあまり行かなくなった」と叔母から聞いた。「すごく疲れる」「気分が乗らない」と、誘いを断るようになったという。

 それでも5月には大会に出て、良い成績を収めたと電話がかかってきた。ようやく気分が上向きになってきたのだなと、私はすっかり安心していた。

 今年の夏も暑くなるだろうと予感させる6月末。しばらく前から母は私にも頻回に電話をかけてくるようになっていた。

「最近手がしびれて震えるのよ」という、2度目の電話の内容に私はうっとうしくなり、「はいはい、用がないなら切るからね」と邪険に応じて電話を切ろうとしたが、その時の電話はいつもとは少し様子が違う感じがした。

「最近、手がしびれて震えるんだけど、お父さんが気のせいだと言って怒る。私の脳がおかしいのかな。病院に精密検査に行ったほうがいいかな」

 母親の「ガラケー」には、鈴がついていた。話している間中、それがチリチリと音を立てているのが聞こえる。背中がヒヤリとした。もしかしたら一大事かもしれない。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

【連載】突然、母が別人になった

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か