独居の親の「セルフネグレクト」を疑うポイントは?

公開日: 更新日:

 以前、訪問診療を行っていた際に「近所にニオイがきつい一軒家があり、玄関前にもゴミが山のように積まれているのですが住人の姿を見なくなり心配で……」と近隣住民から問い合わせがありました。問題の自宅に向かうと外壁の塗装や屋根の瓦は剥がれ落ち、今にも倒壊しそうな外観です。住人は70代後半の男性で、認知機能の低下でスムーズな会話が難しい状況でした。家の中に入ると床はゴミで埋め尽くされ、部屋中に排泄臭と体臭、生ゴミが混ざった悪臭がモワッと漂い、風呂場を見ても長らく使った形跡は見られません。

 不衛生な環境では白癬(はくせん)菌がすみ着いて爪白癬や足白癬のリスクを高めるほか、小さな傷口から細菌に感染し、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を繰り返して命に関わる恐れがあります。当初、その男性は医療サービスや福祉の介入をかたくなに拒否されていましたが、最終的に遠方に暮らすご家族の協力もあり、病院を受診して認知症と診断を受け、現在は施設で生活しているとのことでした。

 老親と離れて暮らす家族は、帰省した際にセルフネグレクトの状態に片足を突っ込んでいないかチェックする必要があります。「洗濯物が片付けられない」「ゴミが捨てられない」「公共料金の支払いが滞っている」「髪の毛や爪が伸びっぱなしで身なりに気を使わなくなった」のであれば、将来的にセルフネグレクトを引き起こすだけでなく、孤独死につながるリスクも高い。異変があれば、まずはお近くの地域包括支援センターに相談してください。

▽清水聖童(しみず・せいどう) 横浜医療センター・横浜市立大学病院、国立精神・神経医療研究センター病院勤務、都内精神科・心療内科クリニック勤務を経て2020年11月開業。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ