著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「マイクロプラスチック」はなぜ心臓病のリスクになるのか

公開日: 更新日:

 体内に侵入したマイクロプラスチックは、カイロミクロンなど分子量の大きなコレステロール系の分子に包み込まれ、脂質や細胞の老廃物などとともにプラークとして動脈の壁に付着すると考えられます。それでも、生体からは異物と認識されて異物反応が起こり、炎症が生じて動脈硬化を促進し、心臓トラブルを招きやすくなってしまうのでしょう。

 マイクロプラスチックの種類によっては、体内に一定量以上を取り込むと肺などの臓器に蓄積して遠隔期の悪性腫瘍の原因になったり、血管内に蓄積することで将来的に特殊な動脈硬化を引き起こしたり、血管の脆弱性を招いて大動脈の中に潰瘍性の病変をつくり、それが原因で解離を起こすといったリスクにつながる可能性もあります。

 もちろん現段階では、マイクロプラスチックが心臓や血管にどの程度の悪影響を与え、どれくらいの危険因子といえるのかに関しては、まだはっきりわかっていませんし、今後はさらに大規模で数多くの研究や検証が必要です。ただ、そうしたリスクや問題が議論されていることをしっかり認識しておくことは大切です。

 マイクロプラスチックの取り込みを減らすためには、ペットボトル飲料やプラスチック容器の食品を避けたり、ナノプラスチックを含んだシャンプーや洗顔料、歯磨き剤、化粧品などをなるべく使わないようにするといった対策が考えられます。しかし、現実的にはプラスチック製品を徹底的に排除して生活することはまず不可能でしょう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性