日本肥満学会が提唱する病気の新概念…女性の低体重/低栄養症候群「FUS」とは
「痩せてきれいになったね」など、言ったり聞いたりしたことがある人は多いのでは? 私たちは見た目・健康面で「肥満=悪、痩せ=良」といったイメージを抱きがちだが、近年、女性の「痩せ」や「痩せたい願望」が専門家から問題視されている。今年4月には、日本肥満学会が新たな疾患概念「女性の低体重/低栄養症候群(FemaleUnderweight/UndernutritionSyndrome:FUS)」を提唱した。FUSの概念をまとめた順天堂大学大学院医学研究科の田村好史教授(糖尿病専門医)に話を聞いた。
田村教授によれば、FUS提唱に至ったきっかけのひとつは、「GLP-1ダイエット」の流行だったという。GLP-1は、糖尿病の治療薬「GLP-1受容体作動薬」で、食欲抑制効果があることから“楽に痩せられる”“夢の痩せ薬”などとして注目。GLP-1ダイエットが流行し、国や医師会が警鐘を鳴らす事態となった。
「GLP-1は、肥満によって病気を合併し減量の必要がある『肥満症』の治療薬としても使われます。しかしGLP-1ダイエットでは、肥満症でも糖尿病でもない適応外の人がGLP-1を使い、健康被害が報告されました。肥満に関しては『メタボリックシンドローム』という言葉が浸透し、肥満対策が重視されていますが、痩せへの対策は不十分。痩せについて社会的に啓発するべく、その一環としてFUSという概念が提唱される流れとなりました」
日本は女性の痩せが先進国の中で極めて多い国だ。
20代では5人に1人が「将来の健康リスクが高い痩せ(体格指数BMI18.5未満)」。痩せは健康面でさまざまな障害をもたらすが、メディアの影響もあり「痩せている方がいい」という思い込みが根強い。田村教授らの調査では、標準体重でも太っていると認識している女性、痩せているのにそう認識していない女性が多いとの結果が出ている。
「標準体重でも、ダイエットで短期的な栄養失調のような状態をたびたび経験している人は、不定愁訴を感じやすいことも調査結果から明らかになってきました。そのため、FUSの『女性の低体重/低栄養』は、低体重あるいは低栄養どちらか一方であっても問題であるという意味合いを持っています」