訪問診療は医療的役割だけでなく地域の「見守り役」としても重要
また、訪問スケジュールはヘルパーさんが同席できる時間に合わせるよう調整し、安心して在宅医療をスタートすることができました。
最近、このように、骨粗しょう症や高血圧などの慢性疾患を抱え、生活の中で徐々に心身の衰えが進む「フレイル(虚弱)」状態の高齢者が増えています。とくに、頼る家族や支援者がいない独居高齢者にとって、訪問診療は大切なセーフティーネットとして機能します。
訪問診療では、定期的にご自宅を訪問して生活の様子やQOL(生活の質)を確認できるうえ、転倒などのリスクが高い方でも、何かあったときにすぐに駆け付けて対応できる体制を整えておくことが可能です。
反対に、在宅医療を受けていないまま万が一ご自宅で心肺停止となった場合、救急車を呼ばれた際には警察による検視が必要となることがあります。しかし、訪問診療を受けていて、かかりつけ医が日頃から患者さんの状態を把握していれば、その医師が自宅に赴き、落ち着いた環境で死亡診断書を発行することができ、近しい方が静かに見送ることも可能です。
当院ではこれまでも、がんの緩和ケアや輸血など、病院に近いレベルの医療を在宅で提供することに力を入れてきました。これからは、こうした医療的役割だけでなく、地域の「見守り役」としての訪問診療の役割も、ますます重要になっていくと感じています。