「酪酸菌」を増やすには何をすればいいのか…がんや認知症も予防
2020年以降に世界中で流行した新型コロナ感染症の重症患者は、炎症応答が制御できないサイトカインストームと呼ばれる病態になることが報告された。原因として、腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)の乱れが明らかになり、重症例では酪酸を作り出す酪酸産生菌の減少、それに続く制御性T細胞の減少による炎症制御の不能が関わっているとの見方もある。なお、酪酸菌は芽胞と呼ばれる殻を作るため、胃酸や胆汁に負けず、生きたまま腸に届く力がある。
酪酸はほかにもがん抑制遺伝子を抑制して免疫療法の効果を上げたり、骨芽細胞を活性化して骨形成を促進したり、免疫寛容を誘導してアレルギーを抑制するなどさまざまなメリットがあるとされる。
近年の研究で酪酸は脳の健康にも関係していることが明らかになりつつある。
「認知症の6割を占めるアルツハイマー病の原因のひとつが神経炎症で、腸内細菌叢が関係していることが示唆されています。昨年発表された研究ではアルツハイマー病(AD)や軽度認知障害(MCI)の患者さんの腸内マイクロバイオータには、酪酸酸性菌の存在比率が低いことが報告されているのです」