老いの醍醐味は「楽しい時間」を長く味わえること!
この研究は、日常生活における「内部時計モデル」の動きについて調べた実験でもあります。たとえば、私たちが学生の頃に友だちと一緒にいる楽しい時間は、アッという間に感じたと思います。これは、時間を測る体の中にあるペースメーカーが、「楽しい」という感情的な刺激に向かうことで、時間を感じる信号(パルス)が失われるという感覚になることで、「時間が飛ぶように早く過ぎた」と感じるからです。
対して、興奮や注意を覚えたりすると、信号をより多く感じ、短い時間しか経っていないのに「長い」と感じます。有名な例として、「見張っている鍋はなかなか沸かない(A watched pot never boils)」という格言があります。鍋に注意を向けているとき(時間に注意を向けているとき)は、信号をより感じるため、時間が長く感じられるのです。
そのため、リウらの研究で高齢者たちが、ポジティブな時間を長く感じたという、本来とは逆の結果をもたらしたことは発見ともいえます。高齢者にとっては、その楽しさがとても強く印象に残る(あるいは意識的に処理する)からこそ、時間を長く感じることができたのではないか--つまり、酸いも甘いもかみ分けた、経験豊かな人生の達人だからこそ、ポジティブな時間を吟味することができ、楽しい時間を長く感じられると考えられるのです。


















