「大丈夫、あなたが大好き。大事だよ」…病状が進行する夫から妻への言葉
床に座り込んだままの男性は、「手間をかけさせてごめんね、ごめんね」と、ご自身の容体よりも奥さんのことを気にし、しきりと謝ります。ご自身は立つことが難しくなり、徐々に体が不自由になっていく中で、奥さんをなだめる様子が印象的でした。
幸い、転倒による痛みはないとのこと。ベッドにお戻しすると「あーよかった」と安心され、ご自身で足を動かして痛くないことを明るくアピールされました。そして、心配で泣きじゃくる奥さんに対し、「大丈夫、あなたが大好き。大事だよ」と優しく声をかけ、なだめる姿が深く心に残りました。いったいどちらが患者なのか、分からなくなるほどでした。
確実に衰え、限界を迎えようとしているこの患者さんのように、日常生活を送るために必要な動作(ADL)が徐々に衰え、できないことが増えていくのは自然なことです。
そんな患者さんを見守るご家族は、不安と共に寂しさを覚えるものですが、逆に患者さんからご家族に対して、感謝やねぎらいの言葉が投げかけられることは少なくありません。
特にこの患者さんのように、「大丈夫、あなたが大好き。大事だよ」といった言葉を伝えられると、その真心は奥さんだけでなく、私たち医療者も大きく励まされます。
大切な人に、心からの大切な言葉を伝えることは、簡単なようでなかなかできるものではありません。限られた時間の中で、はっきりと愛と感謝を伝え合えるようなご夫婦の関係に、私たちは憧れを抱くと共に、改めて言葉の持つ大きな力と大切さを考えさせられるのでした。



















