(1)薬が消える…戦争がもたらす「薬飢饉」
もちろん、いまの日本では医薬品の備蓄や供給調整の仕組みなどが整備されている。短期的に医療が直ちに機能不全に陥るとは限らない。しかし、戦時には何が起きるのかは知っておいた方がいい。
■「強い精神力で草根木皮を煎じて飲め」
「医療と戦時下の暮らし」(新村拓著・法政大学出版局)には、日本が「薬飢饉」に至る経緯や状況が記されている。
例えば、世界経済のブロック化が進み、医薬品不足が顕在化した1938年の「戦時婦人読本」(国民精神総動員中央連盟)は薬の輸入依存を批判した。病気には「あまり神経質に考えず、なにくそという強い精神力でもって草根木皮を煎じて飲むような、そうした素朴、単純な心でありたい」として、漢方や民間薬の活用を訴えている。同年の医療雑誌は、日中戦争以降、医療資材が6~7割値上がりしたと報じた。1940年には買いだめも重なり薬不足が一層深刻化し、戦況が悪化した43年には「薬飢饉」という言葉が一般化する。


















