(5)精神疾患がないのに強制入院…金銭トラブルのある家族の同意で
「入院に同意した家族の同意がなければ退院させられない」
入院9日目、長谷川式認知症スケールで検査された。看護師は「あれ、ずいぶん解けてますね」と驚いた。女性医師はカルテに「長谷川式21点 非認知症」と書いた。
その後、薬の副作用が目立ってきた。日記をつけていたが、目の焦点が合わず文字が二重三重に見えた。体力が落ち、便器にしゃがむと膝が耐えられなくなって便器の中に尻が落ちた。失禁も始まった。とてもつらく、今後どうなるか不安になり、「これは正しい治療じゃない」と思った。
妻に電話して状況を伝えた。看護師だった妻は、薬の影響で脳や神経がダメージを受けていると感じた。病院に電話して退院を懇願したが、病院は「入院に同意した家族の同意がなければ退院させられない」と言った。
次男は「兄と父がお金のことでもめて関係が悪化したので、兄夫婦が過剰に伝えて入院させた」と病院に説明した。妻は歯科医である長男に「お父さんは失禁するようになった。もう限界」と説得した。長男は「分かった」と言って退院手続きをした。37日で退院。妻らが迎えに行くと、江口さんは自力で歩くことができなかった。
江口さんは「不当な拘束をして病気でない人を病人に仕立てている。法律の悪用だ」と憤った。病院の医療保護入院などの措置は、身体の自由と権利を侵害する不法行為だとして、石川医師、女性医師、院長らに損害賠償を求め提訴。2025年5月、宇都宮地裁は石川医師、女性医師が、検査もせず精神疾患があると診断して入院決定をし、向精神薬の投与をしたことは、人身の自由を侵害したと過失認定。院長も管理者として連帯して不法行為があると認定して病院側に311万円の支払いを命じた。
(ジャーナリスト・和田明美)
◆医療保護入院 家族の同意と精神保健指定医1人の診断で強制入院にするため、家族や医師による恣意的な入院も可能。日本弁護士連合会は、本人の意思決定の欠如や長期・無期限の入院を可能にしている実態を批判。制度の抜本的な見直しや廃止を求め、権利擁護体制の整備を訴えている。




















