「ジャックポットプランニング」社長・中川洋さんの巻<1>

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「くいもんや す多ち」(東京・銀座)

 待望の復活は、オイスターバーで知られるジャックポットプランニングの社長だ。17歳から飲食業界に入って50年超。業界の重鎮がプッシュする店は、和食の店だった。

「女将さんを中心に女性3人で切り盛りするおばんざいの店です。電通通りの土橋の交差点から中央通り方面に歩いてすぐのビルの3階。一見ではなかなか見つけにくい、雑居ビルの中にひっそりと構えた店で、客層は紳士的な方ばかりで、とても落ち着いて食事ができるのがいいんです」

みんな女将さんのファン

 カウンターとテーブルが1つ。常連は女将さんとの会話を楽しみにカウンターに腰を落とす。テーブルで接待する人を別にすれば、1人か2人の客がほとんどだ。

「板場とカウンターの間にはズラーッとおばんざいが並ぶんです。横幅40センチくらいの半紙には、その日のオススメが筆できれいに書かれています。達筆な品書きを見ながら、何をいただくか選ぶのも楽しいし、皿を見て女将さんとあれこれしゃべるのもいい。僕に近い年齢ながら、女将さんがとてもかくしゃくとしているから受け答えが的確で、気配りもあるから、みんな、女将さんのファンなんですよ」

季節を感じさせる

 取材した日の品書きには、しらたき明太子和え、ぴりからこんにゃく、大根ふくめ煮と1行に3品ずつ、5行にわたって並ぶ。季節を感じさせるミョウガの甘酢や鱧ざくなども見える。品書きをながめるだけで、ホッとする。

「おばんざいに続いて、その日の野菜が十数種類書かれていて、それはオススメやお好みの調理で。さらに刺し身用の魚介類が日替わりで10種類ほど書かれています。今の時季なら、鱧や鮎はうれしいね。常に旬の食材を交えながら、40種類前後をそろえるのはすごいと思います」

一人でグラスを傾ける常連はカッコいい

 串打ちされてじっくりと火を通した鮎は、川で泳いでいるような姿で提供される。皿に添えられたタデの緑が目に鮮やかで、ほどよい焦げ目が火入れのよさを印象づける。腹に箸を入れると、独特の香ばしい苦味が酒に合うという。

「おばんざいも刺し身も揚げ物も焼き物も、盛りつけが上手なんです。野菜のコーナーにあったゆり根はサクラエビと合わせてかき揚げにしてくれたりね。それで食欲が増す。ついつい酒も進んじゃうね」

 カウンターに並ぶおばんざいは目移りする。隣の人の注文につられて、「僕もそれを」と続けるのも、小料理屋の楽しみだろう。

「こういう店で一人でグラスを傾ける常連サンはカッコいいと思うよね。時々そういう方をお見かけするんです。頑張った自分へのご褒美に、お忍びでいらっしゃるんでしょう。せいぜい気の置けない仲間と2人、ゆったりとした時間を楽しむ店ですよ」

 一つ一つの品書きに価格は書かれていない。酒量によるが、1人1万円前後だそうだ。こんな店で粋に振る舞いたい。記者もつくづくそう思う店だった。 

(取材協力・キイストン)

■いくもんや す多ち
東京都中央区銀座8―5―15 SVAX銀座ビル3階 
℡03・5568・3321

■ジャックポットプランニング オイスターバーやビストロ、ピッツェリアのほか和食店など23店舗を運営。酒や食料品の輸出入販売も。

▽中川洋(なかがわ・ひろし)1950年、静岡県沼津市生まれ。26歳で東京・下北沢に「ジャックポット」をオープン。88年11月、ジャックポットプランニングを設立。

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