著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「有馬記念全軌跡」芹沢邦雄編集

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 1956年の第1回から、2014年の第59回までの有馬記念を、エッセーと写真で振り返る書だ。有馬記念の特徴は、まず第1に、ファン投票で出走馬が決まるという特殊なレースなので、ファンの夢に直結していること。第2は、一年の最後に行われるので、その年の締めくくりの意味が込められていること。この2つが大きい。

 どのレースより馬券の売り上げが多いのも、そういう有馬記念の特別な位置を示しているように思われる。

 これまでに数々のドラマがあった。ヴィクトワールピサとブエナビスタがハナ差の死闘を演じた平成22年は外国人騎手が上位を独占。圧倒的な1番人気のディープインパクトをハーツクライが破ったのは平成17年。アメリカ同時多発テロが起きた平成13年に勝ったのはマンハッタンカフェで、15番人気のメジロパーマーが逃げ切って大波乱となったのは平成4年である。オグリキャップの「感動のラストラン」は平成2年。本書を読んでいくと次々にそれらのゴールシーンが蘇る。

 いちばん印象深いのは、第1回の覇者メイヂヒカリの項だ。この馬の馬主・新田新作は明治座のオーナーで、プロレスや大相撲の後援者としても知られた人物であったが、有馬記念(当時の名称は中山グランプリ)の半年前に急逝。その葬儀に、メイヂヒカリが参列していたというのだ。何時間もおとなしくじっと立っていたという。今年の第60回有馬記念は12月27日に行われる。(トレンドシェア 2685円+税)

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