著者のコラム一覧
北尾トロノンフィクション作家

1958年、福岡市生まれ。2010年にノンフィクション専門誌「季刊レポ」を創刊、15年まで編集長を務める。また移住した長野県松本市で狩猟免許を取得。猟師としても活動中。著書に「裁判長! ここは懲役4年でどうすか 」「いきどまり鉄道の旅」「猟師になりたい!」など多数。

「超一流のサッポロ一番の作り方」マッキー牧元著

公開日: 更新日:

 男の自炊、その基本は袋麺だ。こだわりのビーフストロガノフなどと小ざかしいことは言わず、チャッチャと作って黙々と食べるのが好きだ。本書はありふれた食事を楽しむための指南書。メインは前半のレシピと文章で、後半には牛丼からおでんまで、ありふれた外食メニューの食べ方が収録されている。

 調理のルールは、10分以内で作る、わざわざ買い出しに行かない、醤油や味噌は入れないなど。手間を掛けずに最大の効果を狙う作戦である。

 用いる“武具”の先頭打者は「サッポロ一番塩らーめん」。これをタンメン風、ホーチミン風、エスニックつけ麺風、香港下町風など9変化させている。ムム、味なことを。

 焼きそば編の武具は「マルちゃん焼きそば」と「ペヤング」である。平凡な選択がいい。写真を見てるとチープ感があって、そこまでうまそうに思えないのがまたいい。日常食なんだから味はそこそこで満足しよう。欲張りすぎは品がないし、嘘はよくない。

 作り方はほかにも、目玉焼きや卵かけご飯、バタートーストやナポリタンと続き、ついつい適当に作ってしまいがちな男料理を、一手間加えることで変身させていく。ポイントは、自分でも作れると確信できる点。レシピも付けられ実用性が高い。

 僕が高く評価したいのは、本書が著者の経験を土台として作られていることだ。企画先行の本ではないのは文章を読めばわかる。マッキー牧元さんは、自分が好きで実践している食べ方だけを取り上げ、舌に馴染んだ味を教えてくれている。

 創意工夫の始まりは小学2年。「チキンラーメン」にお湯をかけず食べてみたことだという。
<誰もが少しの疑いもなく、当たり前のようにしている食べ方に疑問を持った>

 年季が入っているのである。読了後、さっそくタンメンを作った。僕が使う武具は「マルちゃん正麺旨塩味」である。(ぴあ 1200円+税)



【連載】北尾トロの食いしん本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る