天笠啓祐(科学ジャーナリスト)

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10月×日 デジタル化は、一日中座った生活を強制する。外出する機会を増やすため、なるべく本屋などへ出かけるようにしている。それにしてもデジタル化の勢いは止まらない。このまま行くとどうなるのか。世界的にこの流れに対する警告が出てきているが、まだ圧倒的に弱い。

 その中で最近手にした本がヴァージニア・ユーバンクス著「格差の自動化」(ウォルシュあゆみ訳 人文書院 3080円)である。米国ではデジタル化が貧困者を自動的にリストアップし、追跡し、取り締まり、処罰している、という内容で、デジタル化が格差社会を拡大する様がリアルに描かれている。

 この本で解説を書いている堤未果さんは「デジタル・ファシズム」(NHK出版 968円)の中で、コロナ禍がデジタル化を加速し、そのデジタル化が強欲資本主義の最終仕上げに向かって動かしている、と指摘する。

11月×日 遺伝子組み換え食品に関する消費者団体の会議に出席した。会議がやっとリアルで行えるようになった。その中で、強欲資本主義がバイオテクノロジーの世界も変えつつあることが問題になった。トマト、マダイ、フグというようにゲノム編集食品が次々と承認されている。ワクチンの世界もメッセンジャーRNAワクチンが席巻している。生殖医療や臓器移植の世界も変わってきた。医薬品の開発も様変わりである。その中で新型コロナワクチン接種の強制化のように、批判を許さない環境が広がっている。その波は農業や漁業にも及んでいる。

 そして登場したのが、農水省が肝いりで作成した「みどりの食料システム戦略」である。鈴木宣弘ほか著「どう考える?『みどりの食料システム戦略』」(農文協 1100円)は、この戦略を取り上げているが、有機農業の割合を増やすという甘言の背後にある、ゲノム編集作物や魚、RNA農薬など、バイオテクノロジーを軸に展開している日本の農林水産業の戦略を見ることができる。ハイテク化が社会をブルドーザーのように動かしているが、これを止める力が弱まっている現実に慄然とする。

【連載】週間読書日記

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