下村敦史(作家)

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2月×日 サグラダ・ファミリアの謎を巡る“ガウディ・コード”とも言うべき、僕の新刊「ガウディの遺言」(PHP研究所 1980円)で書店員さん数人とZOOMで懇親会。作中に書いたバルセロナの描写やガウディの人物像やサグラダ・ファミリアの歴史の話で大いに盛り上がる。

2月×日 文庫化した群像劇のホテルミステリー「ヴィクトリアン・ホテル」(実業之日本社 858円)の販促イベントとして、書店員さんたちを新居の自宅に招き、作中で描写したような洋館風の内装を楽しんでもらう会を開催。

3月×日 息抜きにPS5のサッカーゲームである「eFootball 2023」を楽しみつつ、幻冬舎の連載原稿第1話を仕上げる。作家人生を賭ける勝負作になる予定で、気合を入れる。

3月×日 桃野雑派さんの新刊「星くずの殺人」(講談社 1870円)を読む。桃野さんは僕と同じく江戸川乱歩賞を受賞してデビューした作家で、京都在住同士ということもあり、自宅に招いて次回作の話を伺ったことがある。その際、“宇宙の無重力空間で発生する首吊り死体”という大変魅力的なアイデアを聞いており、それが物語として無事に仕上がっての刊行だ。

 そのアイデアだけでもう勝ちでしょう、と伝えた物語は、無重力の宇宙ホテルで発生する殺人の方法はもちろん、大胆で壮大な犯行動機に至るまで、宇宙でしか起こりえないミステリーとなっている。

 助けが期待できない無重力の宇宙ホテルというクローズド・サークル下で、首吊り死体が発見される──という物語は非常に興味をそそり、ミステリーファンなら誰もが胸躍る設定だと思う。誰が何のためにわざわざそんな場所で事件を起こしたのか。

 桃野さんの江戸川乱歩賞受賞作「老虎残夢」は武侠小説で、「館」×「孤島」×「特殊設定」×「百合」という、個性豊かな本格ミステリーだったが、受賞後第1作でしっかりとデビュー作を超えてきたあたり、今後も期待できる作家である。

 乱歩賞作家同士、切磋琢磨していきたい。

【連載】週間読書日記

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