森朗(気象予報士)

公開日: 更新日:

11月×日 最近、中高生を相手に気候変動や地球温暖化の話をする機会が多い。せいぜい10数年しか生きていないので、気候が昔と比べて変化した実感はないはずなのだが、地球温暖化や気候変動の知識がとても豊富で驚かされる。これも環境教育の賜物だろうか。それは素晴らしいことだが、あまりに刷り込みが過ぎると、何か起きるとすべて温暖化が原因だ、二酸化炭素は悪者だ、といった誤った認識を持たれないか、やや気がかりだ。二酸化炭素も海も火山も生物も、長い地球の営みの中で発生したり消えたり、増えたり減ったりする物質にすぎない。

 アンドルー・H・ノール著「たった1日でわかる46億年の地球史」(鈴木和博訳 文響社 1958円)は、地球の誕生以来の、宇宙と大地と大気と海洋、そして生物の相互作用とそれぞれのダイナミックな変化を、わかりやすい図版とともに教えてくれる。まずはこうした自然に起こる環境変化を知ってもらう必要があると思う。

11月×日 気候変動の危機を伝えるのは難しい。深刻な風水害や記録的猛暑が起こるたびに、温暖化が原因だと唱えても、だんだんマンネリ化してしまい、地球沸騰化のような強い言葉も響くかどうか。そんな中で、生物史上6度目の大量絶滅が迫っている、とも言われ始めた。穏やかではない。

 尾上哲治著「大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変」(講談社 1100円)は、これまでに地球で起きた5回の生物大量絶滅事件のうち、約2億年前におきた4回目の大量絶滅についての考察だ。著者である地質学者がフィールドワークの裏話なども交えつつ、生物の大量絶滅に至る過程をわかりやすく解き明かしていく。面白く読み進めるうちに気づくのが、絶滅までの道のりが数十万年、数百万年という時間スケールであること。今の気候変動の速度は、下手をするとその1000倍以上の速さだ。そういえば中高生の中に、わずか10数年の間の気候の変化を感じている子もいた。そのときは聞き流してしまったが、実際にそんな速度で事が進んでいるのかもしれない。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

  3. 3
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  4. 4
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  5. 5
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

  1. 6
    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

  2. 7
    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

  3. 8
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  4. 9
    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異