著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

寒い時季は高血圧や心臓病に注意するべし

公開日: 更新日:

 春が近づいていますが、まだまだ寒い日が続きます。「外の気温が低いと血圧は高くなる」ということをご存じの方も多いでしょう。これは体内の熱を逃がさないように血管が収縮するためです。ホースの口を狭くすると水圧が上昇するのと同じように、血管が収縮すると血圧は高くなります。

 この理屈は理解しやすいですが、それによって、高血圧の合併症である心臓病は増えるのでしょうか。中国で行われた観察研究が、「欧州心臓病学会誌」(2015年5月号)に掲載されました。

 この研究は中国10地域において、過去に心臓病を経験した2万3040人(平均61歳)を解析したものです。外気温と血圧、心臓病発症の関連を7年間にわたり追跡調査しました。なお、年齢、性別、高血圧治療、喫煙、飲酒など、結果に影響を与え得る因子で統計的に補正して解析しています。

 その結果、収縮期血圧(上の血圧)は夏季(平均25.5度)で平均136mmHg、冬季(平均3.8度)で平均145mmHgと、統計的にも有意に冬季で高くなりました。外気温が5度以上という条件の下で、気温が10度下がると収縮期血圧が6.2mmHg上昇することが示されています。さらに、収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに、心臓病による死亡は21%増加しました。心臓病による死亡は、夏季に比べて冬季で41%も多かったと報告しています。

 厚労省の統計でも、心臓病や脳卒中による死亡は秋から冬にかけて増加するようです。季節との関連性は、例えば感染症などの影響もあるかもしれませんが、冬場の寒さは血圧の上昇、そして心臓病にも注意が必要かもしれません。

【連載】役に立つオモシロ医学論文

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    小泉進次郎「無知発言」連発、自民党内でも心配される知的レベル…本当に名門コロンビア大に留学?

  2. 2

    クビ寸前フィリーズ3A青柳晃洋に手を差し伸べそうな国内2球団…今季年俸1000万円と格安

  3. 3

    高畑充希は「早大演劇研究会に入るため」逆算して“関西屈指の女子校”四天王寺中学に合格

  4. 4

    9日間の都議選で露呈した「国民民主党」「再生の道」の凋落ぶり…玉木vs石丸“代表負け比べ”の様相

  5. 5

    国分太一コンプラ違反で無期限活動休止の「余罪」…パワハラ+性加害まがいのセクハラも

  1. 6

    野球少年らに言いたい。ノックよりもキャッチボールに時間をかけよう、指導者は怒り方も研究して欲しい

  2. 7

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 8

    ドジャース大谷「二刀流復活」どころか「投打共倒れ」の危険…投手復帰から2試合8打席連続無安打の不穏

  4. 9

    28時間で150回以上…トカラ列島で頻発する地震は「南海トラフ」「カルデラ噴火」の予兆か?

  5. 10

    自転車の歩道通行に反則金…安全運転ならセーフなの? それともアウト?