著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

“的中率”は90%超 がん血液検査の読み方と過剰診断リスク

公開日: 更新日:

 例えば、乳がんは5つのマイクロRNAを組み合わせて調べたところ、感度は97%でした。感度は、Aと診断して実際にAだった人の割合。97%ということは、乳がんと診断した100人のうち、3人がハズレたということです。

 ほかのがんの感度はというと、卵巣がん99%、膵臓がん98%、大腸がん99%、膀胱がん97%、前立腺がん96%と軒並み好結果です。

 しかし、問題がないわけではありません。過剰診断です。例えば、女性に多い甲状腺がんと男性の前立腺がんは、命に影響を及ぼさないタイプもあります。そういうがんを掘り起こして、「がんです」と突きつけられると、手術が不要なのに手術される患者が出てきます。韓国では、甲状腺がん検診が行われたことで、過剰診療が社会問題になりました。つまり、がんの血液検査を受けた人は、検査結果との向き合い方、読み解き方がとても重要なのです。

 では、どう読むか。まず甲状腺と前立腺は、血液検査を受けない方がいい。過剰診療の可能性が捨てきれません。


 そのほかでいうと、膵臓がんと胆道がんは発見しにくい上、有効な検診法が定まっていないので、血液検査が有望でしょう。高リスク判定なら、超音波検査などの精密検査を受けるといい。肺で高リスクならCT、食道なら内視鏡といった具合です。

 血液検査の結果で、すぐに治療ということではなく、精密検査を受ける前の前段階という位置づけでいいでしょう。1回の血液検査がセーフだから、その後はノーチェックというのも考えもの。血液検査がどんなに効果的であっても、定期的ながん検診を受けることが重要なのは、今後も変わりません。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」