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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

慶大の岸博幸教授が多発性骨髄腫を告白…移植と抗がん剤のつらい副作用

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 岸さんのツイートには抗がん剤治療とありますが、治療のカギは造血幹細胞移植で、その移植の前提となるのが大量の抗がん剤治療です。

 治療を始める前にあらかじめ患者さんの造血幹細胞を採取して凍結保存します。その上で大量の抗がん剤でがん化した形質細胞を限りなくゼロに近い状態に減らしたうえで、凍結した造血幹細胞を解凍して、注入するのです。

 大量の抗がん剤を使用すると、がん化した形質細胞を叩ける半面、正常な血液を作る造血機能も大きなダメージが避けられません。そこで、造血幹細胞の移植で造血機能を回復させるのです。

 大量の薬物療法と自家移植の併用は、通常の抗がん剤より高い効果が期待できる一方、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、脱毛、食欲不振、口内炎などの副作用も強い。肝臓や腎臓、心臓、中枢神経など命にかかわる重大な機能障害を招くこともある治療法です。

 岸さんはそういうことを知った上で友人、知人を心配させないように気遣ったのでしょう。「この長い顔がハゲになったらどれだけ見苦しくなるかの社会実験しようと思いまーす」と脱毛のみにフォーカスして明るくつづっていますが、高い効果の一方、体への負担がとても重い。

 一般には、大量の抗がん剤と移植の併用は、65歳以下で体調がよい方に限られます。岸さんは60歳。その明るさと気持ちの強さで、ぜひつらい治療を乗り越えてほしいと思います。

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