著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

ネガティブな言葉の前提をつくらない…それが脱ストレスになる

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 では、これが事件だったらどうなるでしょう? もし、何らかの事件の捜査の途中で、誰かが意図的に「低さ」のような言い回しで質問をしたら──。犯人に関する目撃者の印象も変わりかねないということです。

 目撃者は事件の犯人のことを、「犯人は170センチくらいでした」と言っている。しかし、実際には2メートルの被告人が法廷にいる。皆さんが裁判員だったら、“目撃者が見た犯人”と“法廷にいる被告人”は別人だと思うのではないでしょうか。

 こうした言葉のトリックは、「前提」にあります。高さは普通の聞き方で、「あなたの背の高さはどれくらいですか?」と聞くのは、背が低い人にも高い人にも当てはまる言い方です。しかし、低さで聞くと、背が低いことが前提となります。

 前提を含んだ言葉は、人の判断や印象の形成に大きな影響を与えてしまいます。考え方によっては、誘導できてしまうとも言えます。「京都への旅行は遠いですか?」と聞かれれば、「遠い」と感じるし、「京都への旅行は近いですか?」と聞かれれば、不思議と「近い」と思えてしまう。何をもって前提の言葉とするかは、とても大事なことなのです。

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