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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

すい臓がん治療「MRリニアック」の画期的な成果…北村総一朗さんは治療後2年で転移なし

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 実は、すい臓がんの治療は重粒子線を含めて高精度な放射線治療が重要になっています。リニアック(直線加速放射線治療装置)とMRIが一体化された「MRリニアック」がそれです。これまではCTとの一体化タイプが主流でしたが、MRIの方が提供される情報量が圧倒的にCTを上回り、より高精度な治療が可能なのです。

 MRリニアックは病変や周りの正常臓器をリアルタイムに「見ながら」照射できるのが、これまでにないメリット。すい臓を取り囲む小腸は、放射線でダメージを受けやすく、それが照射を困難にさせていました。しかし、MRリニアックなら照射範囲に小腸が入ったことを確認すれば、その場で照射を中断することもできます。

 小腸への悪影響を防ぐ医療器具も開発されていて、これをすい臓と小腸の間に留置すれば、照射できる可能性が上がります。その器具は有害物質を出さずに加水分解されるため取り出す再手術も必要ないのです。

 MRリニアックを用いた臨床試験は、世界で13施設が参加。手術が難しい進行すい臓がん患者136人に5回照射を行ったところ、1年後の生存率は65%、再発を抑えられた人は83%に上りました。重い副作用がゼロだったことは、安全性の高さを裏づけています。

 厄介なすい臓がんにとってMRリニアックは希望の星といえますが、残念ながら日本にあるのは3台のみ。さらなる普及ががん治療を変える可能性を秘めています。

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