著者のコラム一覧
酒向正春ねりま健育会病院院長

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

歩行リハビリ支援ロボットを積極的に使用していないのはなぜか

公開日: 更新日:

■優秀な理学療法士による訓練の方が治療効果は高い

 以前、当院でもロボットを試したことがあります。脊髄損傷によって対麻痺があった患者さんで、左右両方の下肢の筋力が低下してわずかしか足を動かすことができず、足だけで歩くことはできず、上肢を使ってなんとか自分で立つことができる状態でした。そんな患者さんにロボットスーツを装着してもらうと、ギシギシと音を立てながら立ち上がり、少しだけ歩くこともできたのです。

 翌日、そのままロボットリハビリを続けようとしたところ、その患者さんはロボットの装着を拒否されました。「なぜですか? 立てて歩けたじゃないですか」とたずねると、「あれでは、自分が立って歩けるようになったという手応えがないんです。機械にやらされているだけで、楽しくありません」とお答えになりました。使う人によって成功体験の感覚は違うでしょう。そんな体験もあって、私は「ロボットは、よりよく効果的に使える対象者が限られるのではないか」という印象を持っています。

 新しいリハビリ支援ロボットの開発や発表があれば、必ず実際に出向いてチェックしていますが、「これはすごい」と思えるものがまだ登場していないのが現状です。まだ、優秀な療法士の徒手的技術と、AI解析や電気刺激を併用した治療効果の方が高いと考えています。どんな状況下であっても、その患者さんに「歩きたい」という希望があれば、可能な限り寄り添い、歩行獲得を目指せる洗練した理学療法士をたくさん育成することが、私たちリハビリ専門医・指導医の役割だと思います。

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