糖尿病性網膜症で眼科医が非常に危機感を覚える所見がある
しかし、糖尿病性網膜症は自覚症状に乏しい。増殖性でも初期であれば、まだ普通に見えていることが多いのです。そのため、「口を酸っぱくして血糖管理の重要性を伝えているけど、なかなか治療に本腰を入れてもらえない」という返事を内科医の先生からいただくことも少なくありません。
病状が進行し、糖尿病性網膜症が末期に近づくとどうなるか。
眼底検査では、血管の壁から漏れ出す出血が顕著になり、網膜の真ん中の黄斑部が水を含んで浮腫を起こします。この状態になると視力が急激に低下し、患者さんは「急に目が見えなくなった」と言って、慌てて眼科を受診されることが多くなります。
視力が失われる原因のひとつが、前回の本欄でも触れた「新生血管」の存在です。これは、酸素不足を補おうとして網膜が新たに作り出す血管で、本来の血管とは異なり非常にもろく、破れやすい性質を持っています。そのため、網膜や硝子体内で出血を起こし、視力の大幅な低下を招くのです。