著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

「抗がん剤=吐き気・嘔吐」というパターンはなくなってきている

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 そんな中、予測性の吐き気や嘔吐はそれ以外のものとは少し違っています。それまでの抗がん剤治療で吐き気や嘔吐で少しひどい経験をした場合、当然その記憶が残ります。すると、次の治療のときに「クスリを投与したらまた気持ちが悪くなるんじゃないか?」という予測を自然としてしまって起こるタイプになります。船酔いや車酔いしやすい人が、その乗り物を見ただけで吐き気を感じるといったケースと同じ原理です。不安が要因のひとつであるため、抗不安薬が有効な場合もあります。

 吐き気や嘔吐は多くの人が苦痛に感じる症状なので、できるだけ起こらないほうがよい副作用です。以前は経験に基づいて制吐剤(吐き気止め)が使用されていた時期がありましたが、今はエビデンス=科学的根拠に基づいて制吐剤が使われています。抗がん剤それぞれに吐き気や嘔吐を起こすリスクが設定されていて、そのリスクの度合いによって使用される制吐剤が細かく決められているのです。

 そのため、以前ほど抗がん剤治療=吐き気・嘔吐といった感じではなくなっていて、かなりコントロールできるようになりました。クスリ以外にも自分でできる対処法もたくさんありますので、心配な方は医師または薬剤師に相談しましょう。

【連載】高齢者の正しいクスリとの付き合い方

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