深刻な病を患う患者さんとの接し方には医療人でも悩む
それ以上、なかなか言葉が続きません。ニコニコして接するしかありません。アホで破廉恥な政治家の話題で一緒に罵倒したり、「クレオパトラ」とか「ワーテルロー」「ドクトル・ジバゴ」といった名作映画のDVDをお貸ししたり。
まだ死と直面したことがない私は、余命を強く意識する方の心境はわかりません。外来ブースでのその場を楽しくして取り繕うしか術はないのです。
私が医学部に入ったのは1977年ですが、そのころ医学生は、「城砦」(クローニン)と、「魔の山」(トーマス・マン)を読むよう勧められました。
「城砦」は医師が一般社会と医師社会のはざまで取るべき立場とは、を考えさせられます。
一方の「魔の山」は、第1次世界大戦前夜のスイスの高地、ダボスにあった結核療養所での患者同士の愛憎劇です。当時、結核は不治の病でした。患者目線で、皆が「運命」をどう受け止めているのか、あるいは受け止められないでいるか、が描かれています。
ヨーロッパ各地からの患者は背景や職業、思想、民族が多種多様で、さまざまな思いが交錯します。そんな「思い」を知れば知るほど、病気ではない立場の人間は、病人にどう接するべきなのか、ぜんぜんわからなくなります。
本当の意味での「患者に寄り添う患者中心の医療」など、可能なのでしょうか? 医療人も日々苦悩しています。「散る紅葉、残る紅葉も散る紅葉」なんですけどね。「Feeling Through」は、さまざまなことを考えさせられる映画です。



















