(4)夜、脳はなぜ眠くなるのか…「眠気の正体」という最後の謎
「人は起きている時間が長いほど、眠りたいという欲求が強くなります。脳に睡眠を促す圧力が蓄積するためです」
疲れると眠くなる背景には、脳の活動によるエネルギー代謝の変化が関係している。脳が長時間働くと、エネルギー代謝の過程で生じるアデノシンが脳内に蓄積する。アデノシンは神経の働きを抑える作用を持ち、眠気を強める一因になると考えられている。カフェインが眠気を覚ますのは、アデノシンが作用する受容体をブロックするためである。
ただし、睡眠圧はアデノシンだけで説明できるものではない。神経細胞同士の結びつきの変化、脳内の代謝状態、遺伝子発現など、複数の仕組みが関係していることが分かってきた。
1980年代、スイスの睡眠研究者ボルベリーは、体内時計と睡眠圧を組み合わせた「二過程モデル」を提唱した。このモデルでは、体内時計が眠りや覚醒が起こりやすい時間帯を調整し、睡眠圧が必要な睡眠量や眠気の強さに影響すると考える。この考え方は、時差ぼけや徹夜後の強い眠気など、多くの睡眠現象を説明できたため、睡眠医学の基本理論として定着した。


















