<第29回>“フィギュアの怖さ”を知らされたフリーでの重大ミス

公開日: 更新日:

 私も一度、そんなミスをしたことがありました。

 12年シーズンの初戦だったジャパンオープン(国別対抗戦)のフリー演技でのことです。

 プログラム中盤までは順調に演技をこなせていたものの、後半部に差し掛かるリンク中央でのスピンで「事件」が起こりました。

 本来ならスピン終了後、後方に滑り出る予定だったのですが、実際は反対方向の前方に出てしまったのです。

 瞬時に「まずい!」と頭の中が真っ白になりました。

 リンクは楕円形ですから、そのまま滑っていても演技が「裏返し」になるだけ。よほどのファンでない限り、ミスには気づきません。しかし、当時の演目は最後の見せ場のステップをジャッジ(審判)向きに作っていました。ミスしたままでは、そのステップが真逆になり台無しになってしまう。そう思った私は最後のジャンプで方向を修正。何とか終盤のステップまでに本来のプログラムに戻すことができたのです。

 今でこそ笑って話せますが、ミスした瞬間のリンク上での動揺や焦りはいまだに忘れられません。同時に、プログラムを中断できないフィギュアの怖さ、難しさを知らされたのもこの時です。コーチからは「(ミスを)気にすることなく最後までやればよかったのに」と言われましたが、この日はシーズン初戦で初めてお披露目するプログラム。どうしても構成どおりやりたい自分がいましたので……。

 ちなみにこの大会は一緒に出場した日本チームの高橋選手、小塚選手、浅田選手が好成績を残してくれたおかげで、日本チームが優勝。みんなのおかげです。

(つづく)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲