著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

日本高校野球は環境変化 “先駆者”米高校球界の過酷な現実

公開日: 更新日:

 一方、プロ球界入りを目指す高校生は、夏休みに入るとサマーリーグで試合を行い、地域の選抜チーム、市の選抜チーム、複数の市を合わせた連合チームと昇格し、国内外への遠征を伴うリーグであるトラベルボールに参加するのが一般的だ。より上位のリーグに所属すれば、それだけ関係者の注目を集めやすくなる。しかも、もし、これらの階層の最上位にあるショーケースやエリアコード・ゲームに参加できれば、大リーグ球団からドラフトで指名されなくても、奨学金を得て大学に進学する機会が増える。

教育の一環」という名目で行われる日本の高校野球に比べ、米国の高校野球には「プロ球界に入る」「奨学金を得て大学に進む」と明確な目標を据えた枠組みがある。何より、大学の奨学金を得たり、ドラフトで指名される可能性が高まれば、多くの保護者は専門家の指導や、優れた指導者のいるチームに参加させるなど、「1年間で安くて5000ドル(約53万円)、高ければ1万5000ドル(約160万円)はかかる」とされる出費も惜しまない。

 プロ球界を目指す米国の高校生は、幾層にも分かれている厳しい関門をくぐり抜けなければならず、あたかも「一獲千金」を目指す先物取引の商品となっているかのようである。そこには日本の高校生とは異なる、米国ならではの制度的な問題点が横たわっているのだ。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    俺と巨人ガルベスの大乱闘の一部始終…落合博満さんのヘッドロックには気を失いかけた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」

  5. 5

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  1. 6

    侍J井端監督 強化試合メンバー発表の裏に「3つの深謀遠慮」…巨人・岡本和真が当選のまさか

  2. 7

    メジャー今オフにも「二刀流ルール」撤廃の可能性…ドジャース&大谷翔平に他球団のやっかみ集中

  3. 8

    “児童ポルノ”で衝撃逮捕!日本サッカー協会・影山技術委員長の素性…「精神的な負担を抱えていた」の声も

  4. 9

    奈良の鹿愛護会が語った現場のリアル…「シカさんをいじめるな!」の裏に横たわっている大問題

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発