FA資格者97人で行使は中日・又吉だけ…“金欠”巨人不参戦で今オフは「10年に1度」の大不況

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「苦肉の策でしょう」

 球界ではこんな声もある。巨人が、日本ハムを自由契約になった西川遥輝(29)の獲得調査に乗り出している一件だ。

 西川と言えば、今季も含めて盗塁王を4度獲得したスピードスター。巨人は今季、松原がチーム最多の77試合で1番を務めたものの、優勝したヤクルトの塩見や2位阪神の近本のように固定できなかった。このオフ、外野陣では梶谷が持病の椎間板ヘルニアの手術を行い、来春のオープン戦で復帰できるかどうか。亀井は引退、陽も退団したこともあり、食指を動かしたという。

■V逸、菅野残留

 巨人の「カネ」の問題も影響しているとの指摘がある。

 西川は海外FA権を保有しているものの、自由契約選手になったため、今季年俸2.4億円から大幅に安い条件で獲得することができる。1億円程度を用意すれば十分だとみられているが、巨人ではメジャー挑戦を視野に入れていた菅野智之(32)の残留が決定。今季は6勝止まりで5年ぶりに2ケタ勝利を達成できず、今季年俸8億円からの減俸の可能性もあるとはいえ、まとまったカネが必要だ。

 さらに今季はスモーク、テームズら外国人選手が不発に終わり、国際部門をテコ入れした上で、新たな助っ人獲得に動いている。球界OBが言う。

「原監督はこのオフ、新たに3年契約を結び、引き続き、『全権監督』として補強にも動く。V逸した年のオフは大補強するのが定番。1993年にFA制度が導入されて以降、12球団最多の28人のFA選手を獲得。特に原監督は計15年間で16人を取っている。しかし、今回はFA選手の獲得には消極的。原監督は積極的でも球団に“ない袖は振れぬ”という事情がある。コロナ禍により観客動員が大幅に減り、50億円ともいわれる赤字を抱えた昨年と同様、今年も入場制限があったうえに、3位に低迷。1試合1億円程度の売り上げが見込まれたCSの主催権も逃した。十数人の支配下選手を育成契約に切り替えたのも、枠をあけるというだけでなく人件費の問題も含まれているのではないか」

 こうした巨人の消極的な動きが、FA市場にも影響を及ぼした。

 7日にFA権行使手続きの締め切りが迫る中、6日時点で権利を行使したのは、中日の中継ぎ右腕・又吉克樹(31)のみ。菅野をはじめ、メジャー挑戦の意向を持っていた楽天田中将大(33)、ソフトバンク千賀滉大(28)もそれぞれ事情が違えど、残留が決定した。

「去る者は追わず」の広島、DeNAが逆襲

 国内組では、DeNA宮崎敏郎(32)や広島大瀬良大地(30)、九里亜蓮(30)の両右腕に加え、日本一になったヤクルトの正妻・中村悠平(31)、阪神の扇の要である梅野隆太郎(30)もFA権を行使せず、残留を表明。有資格者が97人もいるにもかかわらず、10年に1度あるかないかの寂しさを呈している。

 ある球団の編成担当が言う。

「今オフのFAの目玉は、DeNAの宮崎、阪神の梅野、広島の大瀬良、九里の4人と目されていた。特に大瀬良と九里は巨人がシーズン中から調査対象にしていた選手です。しかし、去る者は追わず、の方針を取ってきたDeNAと広島が大金を用意して残留交渉を行った。昨年、山田哲人と7年35億円+出来高の大型契約を結んだヤクルトしかり、主力を引き抜かれまくってきた球団が、流出阻止に力を入れ始めている。コロナ禍で12球団の収支はほぼ均等になり、巨人、阪神のような金満球団が金銭的なアドバンテージを得づらくなっている事情もあります。家族を抱える選手は、このコロナ禍で生活拠点を変えづらいと考えるケースもあります」

 梅野に関しては、矢野監督の評価が低いこともあり、FA宣言して巨人が名乗りを上げる、との見方もあった。

「ところがいざフタを開けてみると、喉から手が出るほど欲しいはずの中日・又吉も含め、巨人の動きが鈍かった。このことも残留を決めた一因になったと聞いている」(阪神OB)

■安価な米国選手の獲得が容易に

 さらに言えば、国内でプレーする助っ人選手も、阪神のスアレス、ソフトバンクのマルティネスの2人がメジャー移籍した一方、中日のビシエド、ロッテのレアードらが早々と残留を決めた。

「ひとつにはメジャーの動きがある。オーナー側と選手側による労使交渉が決裂、ロックアウトになったことで、例年以上に、安くて優秀な助っ人を獲得しやすい状況にある。すでに獲得を発表している日本ハム、広島に加え、巨人を含めた多くの球団が安価な米国選手の調査に精を出しています」(パ球団関係者)

 金満巨人も今や昔か。

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