「暗手」馳星周著

公開日: 更新日:

 かつてノーヒットノーランを記録した日本プロ球界のヒーロー、加倉昭彦。しかし肩を故障し、台湾のプロ野球で再起を懸けるが八百長に手を染め、闇世界に沈んでいく……。あの「夜光虫」の加倉が、19年ぶりに復活する。

 過去を抹消した加倉は、今やイタリアに居を定め、当地の黒社会では、殺し以外なら何でも請け負う「暗手」という名で知られていた。

 彼に託された新たな仕事は、イタリアのセリエAのチーム、ロッコでゴールキーパーとして活躍している日本人の大森を八百長に巻き込むというもの。巧みに大森の信頼を得た暗手は、コールガールのミカを大森に近づけるが、大森は手もなく籠絡されてしまう。仕掛けは順調にいっていたが、大森の姉の綾がかつて心から愛した麗芬と似ていることがわかってから、暗手の計画は微妙に狂っていく……。

 舞台はイタリアだが、登場するのは、ほとんどが台湾や中国本土の黒社会の面々で、アジア色が濃厚。著者ならではのアジアン・ノワールが全開。(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 2

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  3. 3

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  4. 4

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした

  2. 7

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  3. 8

    巨人は国内助っ人から見向きもされない球団に 天敵デュプランティエさえDeNA入り決定的

  4. 9

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 10

    佐藤輝明はWBC落選か? 大谷ジャパン30人は空前絶後の大混戦「沢村賞右腕・伊藤大海も保証なし」