「雪ぐ人 えん罪弁護士 今村核」佐々木健一著

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 白髪まじりのボサボサ頭、くたびれたスーツ、底がすり減った靴。巨体をユサユサと揺すりながら現れた人は、敏腕弁護士のイメージとは大きくかけ離れていた。

 今村核。無実の罪に問われた被告人の弁護を引き受け、14件の無罪判決を勝ち取ってきた「えん罪弁護士」である。有罪率99.9%の日本の刑事裁判において、無罪判決はわずか1000件に1件。それを知れば、今村の凄さが分かる。

 2016年11月に放映されたNHKのドキュメンタリー番組「ブレイブ 勇敢なる者」の第2弾、「えん罪弁護士」は、大きな反響を呼んだ。

 その番組のディレクターが、映像化されなかった部分も含めて書籍化。今村核という希有な人物を見つめ、彼の仕事と生き方を通して、日本の刑事司法の歪み、えん罪弁護の困難な現実を明らかにしている。

 えん罪弁護は苦難と失意の連続。弁護側が検察と違う新たな証拠を出さない限り、無罪にはならない。だから今村は科学的な立証の労を惜しまない。そこまでやられたらグウの音も出ない、というところまで突き詰める。例えば、ある放火事件では、日曜大工で現場の押し入れ模型を手作りし、消防研究所の実験室に頼み込んで火災実験を行い、検察側の鑑定書の根拠を突き崩した。放火の罪に問われていた寿司屋の店主は無罪になった。

 しかし、勝っても喜びより怒りが先行するという。もともと無実なのだから、無罪になって当たり前ではないか。えん罪事件の被告人にはほとんど私財がないから、採算度外視。やればやるほど弁護士は困窮し、破滅に近づく。今村は、死を考えたことがあると明かす。しかし、目の前に無実の罪で苦しんでいる人がいる。とりあえず、なんとかしなければ。こうして今村は「冤を雪ぐ人」であり続けた。そして今、えん罪弁護は「私が生きている理由、そのものです」と言い切る。

「何のために生きるのか」。読者もまた、自問せずにはいられなくなるだろう。

(NHK出版 1500円+税)

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