「オトナの保健室」朝日新聞「女子組」取材班

公開日: 更新日:

 1980年と81年の2回にわたって雑誌「モア」誌上で行われた女性の性に関するアンケートはその後「モア・リポート」(83年)としてまとめられた。45項目のアンケートに対して、日本全国のあらゆる規模の市町村から5770通もの回答が寄せられた。年齢は13歳の中学生から60歳の主婦まで、職業、性体験、環境なども幅広い層にわたっており、これほどの規模の調査は日本では初めてだった。それから40年ほど経った現在、日本人の女性の性意識はどう変化したのか、あるいは変化していないのか。それを知るのによき指標となるのが本書である。

 2015年4月に始まった朝日新聞の企画を再編集したもので、読者からの投稿と識者のコメントからなっている。アンケートではなく新聞への投稿という点で「モア・リポート」と単純に比較はできないが、それでもいくつかの面が見えてくる。

 まず、本書で大きく扱われている「セックスレス」。40年前はセックスレスという言葉そのものがなく、「パートナーとのセックスにどんな不満や希望がありますか」という設問の中で、男の身勝手な要求や、嫌々ながらも従っているという不満は出てくるが、「レス」に関する回答はない。

 一方、「モア・リポート」の「社会と女の性」という項目で、人格と切り離された欲求のはけ口とされることに対しての女性たちの強い怒りの声は、本書の「セクハラ」の項と共通するところが多い。

 その他、両者を併読していくと興味は尽きないのだが、女性たちがこうして自らの性に真摯に向き合っているのに対して、男の方はこの40年、ほとんど意識が変わっていないことが浮き彫りになってもいる。男性諸氏こそ本書を読むべし。さもないと、性の現場から置いてけぼりにされますよ。 <狸>

(集英社 1300円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  2. 2
    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

    本来は「9月左翼構想」だが…大谷が打てば打つほど手術明けの外野守備は前倒しの気配

  3. 3
    訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

    訪日客狙い“奥日光2泊3日400万円ツアー”のアテが外れた理由

  4. 4
    「いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと…」当時の山田GMが首をひねった図太い神経

    「いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと…」当時の山田GMが首をひねった図太い神経

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  2. 7
    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

    大谷「DH独占」打ちまくり、週間MVPも…他の野手を休ませられないロバーツ監督のジレンマ

  3. 8
    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

  4. 9
    東山紀之社長の鉄面皮「SMILE-UP.」の体質は旧態依然…進まぬ被害者補償に批判と失望

    東山紀之社長の鉄面皮「SMILE-UP.」の体質は旧態依然…進まぬ被害者補償に批判と失望

  5. 10
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間