北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者」アンドリュー・メイン著、唐木田みゆき訳

公開日: 更新日:

 はっとするほど新鮮な物語だ。主人公は、生物情報工学を駆使して事件を解決する天才教授セオ・クレイ。この男がとにかくすごいのである。

 まだ事件が表面化していないのに、先に死体を発見してしまうのだ。自然科学に対する広範囲な知識を持ち、分析力にも優れ、さらに斬新な手法で推理を積み重ねるセオ・クレイにしてみれば、このあたりに死体が埋まっているはずだ、というのは当然の結論なのだが、そう言われた警察はどうするか。まだ事件が表面化していないのである。それなのに死体を発見するということは、おまえが埋めたのではないかと疑うのも当然。あまりに鮮やかすぎる推理は疑わしい、のである。現代の名探偵はその疑いを解くところから始めなければならないから大変だ。

 真実をあぶりだす過程がスリリングで、スピーディーであること。モーテルの支配人ガスや、ウエートレスのジリアンなど、脇役が活写されていること。最後に現れる「悪役」の存在感に圧倒されること。凄まじいアクションが迫力満点であること。なんと美点が4つも積み重なった傑作なのである。読み始めたら止まらないほど面白いから素晴らしい。

 マジシャンでもあるという著者のアンドリュー・メインは、これが日本初紹介。本書はセオ・クレイシリーズの第1作で、すでに3作まで書かれているというから、すみやかに続刊が翻訳されることを期待したい。 (早川書房 940円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    鈴木杏樹「4000円ラブホ不倫」から1年半… 五十路のセクシー路線で本格再始動

    鈴木杏樹「4000円ラブホ不倫」から1年半… 五十路のセクシー路線で本格再始動

  2. 2
    ワクチン接種完了でも「150日間で死者10万人超」の衝撃予測! 行動制限を緩和して大丈夫なのか?

    ワクチン接種完了でも「150日間で死者10万人超」の衝撃予測! 行動制限を緩和して大丈夫なのか?

  3. 3
    二刀流で結果残す大谷翔平に冷ややかな視線…気になる他球団投手陣からのやっかみ

    二刀流で結果残す大谷翔平に冷ややかな視線…気になる他球団投手陣からのやっかみ

  4. 4
    マルサに目をつけられた 川崎“ハイレベル”ソープ経営者のド派手生活と脱税手口

    マルサに目をつけられた 川崎“ハイレベル”ソープ経営者のド派手生活と脱税手口

  5. 5
    巨人は今年も「育成」大量指名か…“買い漁り”に他球団や大学から悲鳴とブーイング

    巨人は今年も「育成」大量指名か…“買い漁り”に他球団や大学から悲鳴とブーイング

もっと見る

  1. 6
    中田翔が二軍で打撃大爆発も居場所なし…巨人ファームは「とっとと一軍へ」が本音

    中田翔が二軍で打撃大爆発も居場所なし…巨人ファームは「とっとと一軍へ」が本音

  2. 7
    安倍前首相は真っ青…チルドレン90人“造反”で総裁選「高市氏支持」まとまらず

    安倍前首相は真っ青…チルドレン90人“造反”で総裁選「高市氏支持」まとまらず

  3. 8
    日本ハム中田翔「暴力事件」一部始終とその深層 後輩投手の顔面にこうして拳を振り上げた

    日本ハム中田翔「暴力事件」一部始終とその深層 後輩投手の顔面にこうして拳を振り上げた

  4. 9
    ソフトB自力優勝消滅で崖っぷち…V逸なら再び浮上する「ポスト工藤」に城島アドバイザー

    ソフトB自力優勝消滅で崖っぷち…V逸なら再び浮上する「ポスト工藤」に城島アドバイザー

  5. 10
    神戸山口組の中核組織「山健組」分裂と兵庫県警が断定 ヤクザ業界にまた血の雨が降る

    神戸山口組の中核組織「山健組」分裂と兵庫県警が断定 ヤクザ業界にまた血の雨が降る

人気キーワード