「脱毛の歴史」レベッカ・M・ハージグ著、飯原裕美訳

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 季節柄、電車内で美容クリニックの脱毛の広告が目立つ。アメリカ人女性がムダ毛処理に年間1万ドル以上のお金と1カ月以上の時間を費やしているという(2008年)。とはいえ、大多数の女性が首から下の体毛を日常的に除去するようになったのは、100年前に始まった新しい習慣なのだ。その習慣はなぜ始まったのか。そして、何が原因で体毛は忌み嫌われるようになったのか。これまで正面から扱われることのなかった脱毛の歴史の解明に果敢に挑んだのが本書である。

 アメリカ新大陸にやってきた入植者たちの関心を引いたのは、先住民たちの体毛の少なさだった。当初、体毛の少なさは人種的な劣等性の表れと見なされていたが、ダーウィンの進化論が広まるにつれ、体毛が多いのはサルに近い証拠であり、毛深い人間(特に女性)は心身共に不健康な兆候とされるようになった。同時に、20世紀に入ると時代とともに女性のスカートの丈が短くなり、それまで隠されていた部位があらわになる。それも相まって、女性たちは腕や脇、脚といった部位の体毛を除去するようになる。

 しかし問題はその方法だ。初期の脱毛剤にはヒ素などの有毒化合物が含まれていたため皮膚の炎症を起こすことも多く、場合によっては死に至ることもあった。その後、X線、ワックス脱毛、レーザー脱毛と方法は変化してきたが、いずれもトラブルが頻発している。近い将来出てくるだろう遺伝子治療も同様の危険をはらんでいる。

 さらに、フェミニズムが脱毛とどう向き合うかという政治的な問題も浮上してくる。なぜ女性は(近年は男性も)多額な費用を費やして危険を伴う「脱毛」を続けるのか。本書を読んで、一度立ち止まってみることも必要なのではないだろうか。

 <狸>

(東京堂出版 3200円+税)


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