ダマシのテクニック

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「ブラックマーケティング」中野信子、鳥山正博著

 科学が発達しても、いや発達すれば逆に、人はどうやらダマされやすくなるのではないか。



 フランスで脳科学を研究した認知科学者と、アメリカでマーケティングを学んだ経営学者が組んで「悪のマーケティング」を分析する。

 たとえば脳は「わかりやすいものに即時に応答する」という。選挙で演説をじっくり聞くより、ワンフレーズが効果的といわれるのはこのためだろう。釣り広告やステルスマーケティング、振り込め詐欺など悪質な手口が後を絶たないのも、脳の働きを悪用しているからというわけだ。こんなメカニズムを活用したのが、脳の変化を調べて無意識下の意思決定のプロセスを可視化する「ニューロマーケティング」。ところが経営学者によれば、伝統的にカネもうけを汚いと見る日本社会がアメリカ生まれのマーケティングを「腹の底から信用していない」。そのため最先端の理論の導入も遅れているという。「共感させるコツ」や「断られにくいデートの誘い方」などの“あるある話”を脳科学で説明する。表紙と本文の派手な色使いも脳作用の操作のため?

(KADOKAWA 1600円+税)

「なぜ、人は操られ支配されるのか」西田公昭著

 ストレスいっぱいの現代。ネットの発達で人の心はさらに不安にさらされている。

 そんな現実で、人はたやすく操られるようになっているのではないか。本書は現役の心理学者で国連の「テロ対策研究パートナー」、さらに「日本脱カルト協会代表理事」という肩書を持った著者による概説書。

 洗脳とマインドコントロールが混同されがちだが、前者は拷問のような手法によるもの。後者は嘘や隠蔽など、情報のコントロールによるコミュニケーションの詐術。オウム真理教や尼崎連続変死事件など、日本のカルト犯罪の実例が分析されている。

(さくら舎 1500円+税)

「騙されてませんか」荻原博子著

 テレビのコメントでも人気の経済ジャーナリストの新著がこれ。「100億円プレゼントキャンペーン」とか「手数料を安くするためのまとめて引き落とし」「ふるさと納税なら損しない」「入院ゼロでも給付金」「つみたてNISAはいかが」など、身近にあふれる「あるある」話を素材に「人生を壊すお金の落とし穴」を解説する。たとえば「公共料金をクレカで払うとポイントがつく」キャンペーン。なるほどお得だと思うが、実は税金をクレカで払うと手数料は本人負担になる。

 これが納付金1万円につき75円。しかも消費税がさらにかかる。つまり1万円につき83円の手数料のために自腹を切ることになるのだ。

 生活防衛のためにも知っておきたい詐術が満載だ。

(新潮社 780円+税)

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