「認知症世界の歩き方 実践編」筧裕介、issue+design著 一般社団法人ボーダレス監修

公開日: 更新日:

「認知症世界の歩き方 実践編」筧裕介、issue+design著 一般社団法人ボーダレス監修

 認知症は誰にとっても他人事ではなく、家族や自分が発症したらと考えると不安ばかりが募る。そんな気持ちを少し軽くしてくれたのが本書だ。認知症の具体的な症状に対し、ユニークなキーワードを提示しながら、なぜその認知機能障害が起きているかをストーリー仕立てで推理。実践的な解決のアイデアを考える後押しをしてくれる。

 例えば、朝食を食べたのに食べていないと訴える症状。ストーリーのキーワードとして挙げられているのが、「トキシラズ宮殿」だ。認知症の世界には正しい時の流れの感覚を失わせる場所がある。ここに迷い込むと、たとえ起床から5時間経っていてもまだ朝だと認識し、「朝食を食べなければ」と思ってしまうのだ。

 そこで役立つのが、好きな音楽で食事タイムを伝えること。時間を正しく認識するきっかけとなり、“好きな音楽が鳴る→食事をする”という楽しみとなり「トキシラズ宮殿」から抜け出すことに役立つという。

 この調子で、家族が財布を盗んだと訴える症状について考えてみた。選んだキーワードは「創作劇場タイタニック」。認知症の世界では、自分が思い描いたストーリーが現実のものとして現れる。目の前にあった財布が突然消えたと誤認し、在宅している家族が盗んだに違いないというストーリーができあがってしまうのだ。

 これに対応するには、自分も役者になるしかない。患者の世界で起きていることをストーリーとして受け止め、「一緒に探してみよう」とセリフを言いながら役を演じてみるのだ。本書によると、このような寄り添う行動で患者の感情が落ち着きやすくなるという。

 認知症の世界を理解するきっかけとして役立ちそうだ。 〈浩〉

(issue+design 1980円)

【連載】毎日を面白くする やってみよう本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃