「私たちは苦しみの多い社会をどう乗り切るか、という宿題を与えられ生きている」

公開日: 更新日:

 そうしてひとりで酒を飲んでいると、ある種の瞑想の時間のようになって、いままで気付かなかったことや思いつかなかった考えが、ふっと浮かんでくる。インドでは古来から人生を学生期、家住期、林住期、遊行期と分けて、年齢によって生の在り方が変化していくと教えます。そのなかで中年を過ぎると林住期といって、森林に隠栖して修行する時期が来るというのですが、そういう得難い時が来たと思えばいい。自分の人生の生まれてから今までをゆっくり思い返して、ありがたい時間を持つことができたなあ、と思えばいいんです。そのほうが、お姉ちゃんたちと騒いで飲んでいるよりよっぽどいい。自分の部屋だと雑音が多くて静かな気分にならないというのなら、ぜひ長寿院までいらっしゃい。ソーシャルディスタンスで私とは2メートル離れて、ゆっくりお酒を飲めばいいでしょう。

 コロナのためにあれもできなくなった、これもできなくなったとマイナスでばかり捉えるから、苦しみばかりがつきまとってしまう。もともと世の中自体に不安がつきもので、私たちは不安と同居しながら生きていくものなのです。だからこの世界を娑婆、苦しみの多い社会と呼ぶのです。私たちはそんな社会をどう乗り切っていくかという宿題を与えられながら生きている。この答えを見つけにいくのが面白いととられられたら、物の見方が変わってくる。自分の生きている時代に、こんな大変化に遭遇した。これは面白い。この大転換期に遭遇して、自分という人間の在り方はどう変わっていくだろうかと、面白がる気持ちになれば、苦しさもなくなります。飲み歩いて騒いで、落ち着かない疲れる生活から、静かにひとりを楽しむ生活に、一段階上昇したと思えば、残念がる理由など何もないはずですよ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  2. 2

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  3. 3

    “裸の王様”と化した三谷幸喜…フジテレビが社運を懸けたドラマが大コケ危機

  4. 4

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  5. 5

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  1. 6

    小泉“セクシー”防衛相からやっぱり「進次郎構文」が! 殺人兵器輸出が「平和国家の理念と整合」の意味不明

  2. 7

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  3. 8

    菅田将暉「もしがく」不発の元凶はフジテレビの“保守路線”…豪華キャスト&主題歌も昭和感ゼロで逆効果

  4. 9

    元TOKIO国分太一の「人権救済申し入れ」に見る日本テレビの“身勝手対応”

  5. 10

    “気分屋”渋野日向子の本音は「日本でプレーしたい」か…ギャラリーの温かさは日米で雲泥の差