著者のコラム一覧
尾上泰彦「プライベートケアクリニック東京」名誉院長

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

ベートーベンの難聴の原因 昔は先天梅毒説が有力だったが…

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 また、オークションで落札されたベートーベンの遺髪20本余りを1995年に科学者が分析したことがあります。それによると、毛髪には通常の100倍もの鉛が検出されたそうです。このため、ベートーベンは鉛中毒に苦しんでいて、難聴もそのせいではないかという説も浮上しています。この話は、ラッセル・マーティンの著書「ベートーヴェンの遺髪」(白水社)に書かれていますので、興味のある方はお読みになるといいでしょう。

 しかし、最も古くから言われていたのはベートーベンが「先天梅毒」だったという説です。先天梅毒とは、梅毒トレポネーマ・パリダム菌が母親の胎盤を介して胎児に感染する多臓器感染症です。早期と晩期の2通りに分類され、無治療の場合1年以上経過して症状が表れるのが晩期先天性梅毒とされています。生まれたばかりの段階では60%が無症状ですが、多くは生後3カ月以内に症状が表れるといわれています。早期先天梅毒は肝臓や脾臓の腫瘍、梅毒特有の瘡、斑点状丘疹、全身性リンパ節腫大、中枢神経症状などが、晩期先天梅毒は鼻、口、各臓器、骨にゴム腫様潰瘍や、内耳性難聴などが表れます。

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