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坂本昌也国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

ヨーグルトを積極的に食べると「2型糖尿病」になりにくい?

公開日: 更新日:

 ヨーグルトを積極的に食べると、2型糖尿病のリスクを低下できるという研究結果が発表されています。ハーバード公衆衛生大学院栄養学部の教授らが行ったもので、10万人以上を対象に健康状態についてのアンケートを実施。2年ごとに行われ、追跡率90%というこの研究で、ヨーグルトを毎日食べていると、2型糖尿病を発症するリスクが18%減少するとの結果が得られました。

 英国のケンブリッジ大学の研究でも、ヨーグルトや低脂肪の乳製品を週4~5回食べると、2型糖尿病のリスクが低下するとの結果が出ています。こちらは男女3500人を対象に11年間追跡調査。低脂肪の乳製品を種類別に調べると、ヨーグルトだけを食べていた人では糖尿病リスクが28%低下したそうです。

 では、ヨーグルトを積極的に食べるといいのか? この連載を読んでくれている方なら想像がつくでしょうが、私は、ある特定の食品を積極的に食べることは、強くお勧めしていません。もちろん腸内細菌への好影響などもあるでしょうから、適度に取っていただくことは良いと思います。しかし、基本は食事はバランスが大事ですし、実際に、血糖、血圧、コレステロールなどを良好に保っている方は、肉も魚も野菜も炭水化物もバランスよく食べています。

 ヨーグルトには確かに、カルシウムやマグネシウム、ビタミンDなど体にいい成分が豊富に含まれています。ヨーグルトを作るときにできる「乳清タンパク(乳酸菌発酵液)」を炭水化物の摂取前に取ると、インスリンの分泌を刺激するGLP-1という消化管ホルモンの分泌が刺激され、食後の血糖値の上昇が抑えられるという報告もあります。また、腸内環境を整え、血中コレステロールなどを改善するといわれる「プロバイオティクス」もヨーグルトで摂取できます。

 ヨーグルトを日常的に食べている方は、ヨーグルトに含まれる成分の効果もあるでしょうが、それ以上に、体にいいものを日々取り入れようとする姿勢や、健康的な情報に敏感であることが、結果的に2型糖尿病の発症リスク低下につながっていると、私は考えています。

 前述の英国ケンブリッジ大学の研究では、間食として、ポテトチップスやスナックの代わりにヨーグルトを食べていた人は糖尿病のリスクが47%低下していた、という結果も出ています。これがまさに、「体にいいものを日々取り入れようとする姿勢が、病気のリスクを下げる」ということを示しているのではないでしょうか。

■ジャム入りを毎日食べた結果…

 糖尿病患者さんを数多く診ている開業医の先生が、こんなことを話していました。

「血糖コントロールが急に悪くなった人に食事の内容を聞くと、かなりの頻度で『ヨーグルトが体にいいと聞いて、最近食べ始めた』という話が出てくる」

 ヨーグルトだけを適量、食べているならまだいいのですが、「酸っぱいから」とヨーグルトにたっぷりのジャムや蜂蜜をのせたり、夕食後に甘いヨーグルトを食べたりしている……。ヨーグルトのメリットよりも、糖分やカロリーの摂取量が増えるデメリットの方が大きい!

「◎◎◎がいい」と聞いてすぐ飛びつく方は、正しく情報を仕入れ実行に移すのではなく、自分なりの解釈で取り入れる傾向があるように思います。

 そして、そういう方に限って、薬を飲む重要性をいくら説いても、「無理に薬を飲ませようとしている」と、頑強に薬を拒否しがちです。

「ヨーグルトを食べる」ということに目を向けるのではなく、「ヨーグルトを取り入れる食習慣」に目を向けてほしい。

 血糖コントロールなどがいい人はなんでもバランスよく食べているといいましたが、さまざまな栄養素が摂取できていることと、さまざまな食品に目を向けている食習慣の2つの相乗効果で、数値をうまくコントロールできているのだな、と改めて思いました。

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