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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

食道がんは最新治療法より化学放射線療法で…手術をパスする意義

公開日: 更新日:

 飲酒や喫煙の影響で発症しやすいがんの一つに食道がんがあります。その治療法は日本の場合、抗がん剤でがんを小さくしてから手術するケースが多くなっています。その抗がん剤治療について国立がん研究センターのグループは、新たな研究結果を発表しました。

 これまで切除可能な進行食道がんは、シスプラチンと5-FUという2つの抗がん剤治療をしてから手術を行っていました。国立がん研究センターが研究したのは、これにドセタキセルを加えた3剤併用の抗がん剤治療です。

 生存期間について比較すると、その中央値は2剤併用が5.6年。一方、3剤併用は中央値が未到達でした。生存期間中央値は母集団の真ん中の人の生存期間を示しますから、未到達とは母集団の多くが生存され真ん中の人のデータが取れないということです。2つのグループ間を比較すると、統計的な有意差も認められ、3剤併用が従来の抗がん剤治療に比べて生存期間を延長することが認められました。

 一方、欧米では2剤併用に放射線を加える化学放射線療法が主流です。今回の研究では、化学放射線療法と2剤併用の比較はされ、有意差なしとする結果でしたが、化学放射線療法と3剤併用との比較はなされておらず、どちらにメリットがあるか分かりませんが、一ついえるのは手術の有無です。新しい3剤併用は手術が前提です。しかし、化学放射線療法はそれで画像からがんが確認できなくなれば、その後は手術をせず経過観察で済みます。ステージ3の食道がんで闘病した女優の秋野暢子さんが選択した治療は化学放射線療法で、手術はしていません。

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