「脳の陰の支配者」グリア細胞はアルツハイマー病にどう関わっているのか
■発症以前の早期バイオマーカーへの期待も
近年では、アミロイドβやタウタンパク質の凝集・蓄積を単なる「結果」と捉え、「原因」は別にあるとしてさまざまな仮説・探索が進められている。そのひとつが脳の神経細胞を陰で支えるグリア細胞の代謝や炎症制御を焦点とした研究だ。
「脳の85%を占めるグリア細胞には、ミクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどがあり、それぞれがADに関係しています」
ミクログリアはアミロイドβを除去するが、過剰に活性化すると炎症を起こして神経細胞を傷つける。アストロサイトはアミロイドβを分解する酵素を分泌することで病態形成に関わっている。また、オリゴデンドロサイトは、脳内の神経細胞の軸索(他の神経細胞に情報を伝達するための出力機)を絶縁性のミエリンで覆うことで神経伝達の効率化に役立っているが、ミエリンの損傷は認知機能の低下に直結する。さらに、血管周囲細胞との連携障害や病原体の脳への侵入を防ぐ血液脳関門の機能低下、炎症反応の悪化をも引き起こす。