(45)死への道のりを心地よくする手配しか、私にはできないのだ

公開日: 更新日:

 また、この認知症の認知状態は、調子の良い時と悪い時が時間単位、また数日単位で波のように繰り返される。その波全体が次第に下降していくのだと聞いた。

 そんな日々でも、連絡や書類対応が続いていく。ケアマネジャーや施設の担当者とのやりとりは電話が中心で、毎月送られてくる大量の書類を確認・押印・返送する必要もあった。遠距離とはいえ、介護は日常にするすると滑り込んでくる。そして、正解のない状況のなかで、即座に判断を下さなければならないことも多い。

 親は不可逆的に老いていき、やがて死という終わりへ向かう。その道のりをほんの少しでも心地よくする手配しか、私にできることはないのだ。それに、私自身もいつかこの道のりを、手助けしてくれる家族なしに歩いていかなくてはならない。そう考えると、時折恐ろしくなった。

 ある日、母が要介護2から5になったとの連絡が入った。訪問看護の追加契約、ケアプランの見直し。また新たな決断と書類の波が押し寄せてくる。まだまだ、胆力が必要なようだった。  (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    彬子さま三笠宮家“新当主”で…麻生太郎氏が気を揉む実妹・信子さま「母娘の断絶」と「女性宮家問題」

  4. 4

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  5. 5

    ヤクルト池山新監督の「意外な評判」 二軍を率いて最下位、その手腕を不安視する声が少なくないが…

  1. 6

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  2. 7

    違法薬物で逮捕された元NHKアナ塚本堅一さんは、依存症予防教育アドバイザーとして再出発していた

  3. 8

    大麻所持の清水尋也、保釈後も広がる波紋…水面下で進む"芋づる式逮捕"に芸能界は戦々恐々

  4. 9

    “行間”を深読みできない人が急増中…「無言の帰宅」の意味、なぜ分からないのか

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発